工場における生産効率の指標「歩留まり」「直行率」の低下で悩んでいる方向けに、基本定義や両者の違い、現場で低下する原因を分かりやすく解説します。さらに、課題を解決に導く判断軸や、検査・搬送工程の自動化による歩留まり・直行率向上のアプローチ、実際の改善事例まで網羅的にまとめています。
歩留まり(ぶどまり)または歩留まり率とは、投入した原材料や部品の総数に対して、最終的に完成した良品の割合を示す指標です。製造業において、生産効率やコストパフォーマンスを測るための最も基本的な数値となります。
計算方法はシンプルで、「(完成した良品数 ÷ 投入した材料・部品の総数)× 100」で求められます。歩留まりが高いほど、材料の無駄が少なく効率的に生産できていることを意味します。なお、途中の工程で不良が発生しても、手直し(再加工)をして最終的に良品になれば、歩留まりの計算上は良品としてカウントされます。
直行率(First Pass Yield:FPY)とは、製造工程において最初から最後まで一度も手直しされることなく、一発で合格した良品の割合を示す指標です。直行率は各工程における手直しなしの合格率をすべて掛け合わせて算出します。
歩留まりとの決定的な違いは、「手直しの有無」です。歩留まりは手直しをして良品になったものも含むのに対し、直行率は手直しされたものを除外するため、歩留まり率よりもシビアな数値になります。見かけ上の歩留まりが高くても、手直し工数が膨らんでいれば直行率は低くなります。真の製造コスト削減を目指すには、歩留まりと直行率の両方に目を向ける必要があります。
歩留まりや直行率低下の大きな要因の1つが、手作業に伴うヒューマンエラーです。部品の組み間違い、締め付けトルクのバラツキ、検査時の見逃しなど、人の注意力や体調に依存する作業は、どうしても不良の発生率が高くなります。
特に熟練者の退職や新人作業員の増加により、品質レベルを一定に保つことが難しくなっている現場では、不良品の廃棄や手直し工数が膨らみ、数値を大きく押し下げる原因となっています。
設備の劣化やメンテナンス不足によるチョコ停(一時的な停止)も歩留まり・直行率に悪影響を与えます。機械が予期せず停止したり、搬送中にズレが生じたりすることで、製品に傷がついたり、加工不良が発生したりします。
設備が安定稼働していないと、材料のロス(歩留まり低下)が発生するほか、その都度オペレーターが介入して調整や手直しを行う必要があり、結果として「一発合格」の割合(直行率)が減ってしまいます。
後の工程で不良が発覚した場合、その製品を廃棄するか、前の工程に戻して再加工(リワーク)する「手戻り」が発生します。廃棄は直接的に歩留まりを下げ、手戻りは直行率を大きく下げます。いずれにしても、余計な材料費、人件費、時間、再検査の手間がかかります。
現場では「なんとか手直しして出荷している」というケースも多く、見えない製造コスト(目視検査員の人件費など)が経営を圧迫していることが少なくありません。
歩留まりや直行率を改善するための第一歩は、「どこで、なぜ不良が起きているのか」を正確に把握することです。そのためには、各工程の通過数、廃棄数、手直し数などのデータを収集し、見える化することが不可欠です。
勘や経験に頼るのではなく、システムを用いて異常の傾向や発生頻度を定量的に分析することで、効果的な対策を打つことができます。
工程全体の歩留まり・直行率は、各工程の掛け算で影響を受けるため、1つでも極端に歩留まりが悪い工程(ボトルネック)があると、全体の数値は大きく下がります。
見える化したデータをもとに、最も数値を下げている工程を特定し、そこへ優先的にリソース(設備投資や自動化、人員配置の見直し)を集中させることが、全体の改善に向けた判断軸となります。
ボトルネックが特定できたら、その作業を「人が続けるべきか、機械に任せるべきか」を判断します。特に、繰り返し作業や高精度が求められる検査・搬送は、機械による自動化が適しています。
人の感覚に依存していた部分を自動化装置やロボットに置き換えることで、品質のバラツキや材料ロスをなくし、歩留まりと直行率を安定的に向上させることが可能です。
目視検査による「見逃し」や「判定基準のブレ」は、歩留まり・直行率低下の主要因です。これを解決するのが、AIや画像処理カメラを用いた外観検査・寸法検査の自動化です。
機械による検査であれば、疲労による見落としがなく、微細な傷も定量的な基準で正確に判定できます。また、不良データをリアルタイムで前工程にフィードバックすることで、不良品の連続発生(大量の材料ロス)を未然に防ぐ効果も期待できます。
工程間の製品移動を人が手作業で行う場合、落下や接触による「搬送傷」が発生しやすくなります。この課題には、AGV(無人搬送車)やロボットアームを用いた搬送の自動化が有効です。
設定された軌道・速度で正確に運ぶため、製品への物理的なダメージ(廃棄ロス)を軽減でき、結果として手直し工程の削減(歩留まり・直行率の向上)に貢献します。
部品の組み付けやネジ締めなどにおいて、ロボットを活用した自動化を導入することで、作業の標準化と品質の均一化を図ることができます。
トルク管理機能付きのロボットなどを導入すれば、締め忘れや締め付け不足といったヒューマンエラーを物理的に排除できるため、工程一発合格の割合を大幅に高め、無駄な部材の消費を抑えることができます。
歩留まり・直行率を改善・維持するために、現場で以下の項目が満たされているか確認しましょう。

目視検査の限界による見逃しや、不良原因の特定に時間がかかることが直行率低下の課題となっていた現場において、自動化システムとデータ連携を導入した事例です。
人の目では見逃しがちな微細な欠陥を機械で高速かつ高精度に検出し、不良品の流出を防止。さらに、検査結果のデータを蓄積・分析し、前工程での不良発生原因を特定してフィードバックを行うことで、ライン全体の直行率と歩留まりの大幅な向上を実現しています。
参照元:オムロン(https://www.fa.omron.co.jp/solution/case/col_006/)
歩留まり・直行率を向上させるためには、単に「気を付ける」といった精神論ではなく、どの工程でなぜ不良(手直しや廃棄)が発生しているのかをデータに基づき正確に特定することが重要です。ボトルネックを見極めたうえで、人の限界を補う自動化システムを導入することが、根本的な解決に繋がります。
検査工程の見逃し、搬送時の傷、組立時のバラツキなど、歩留まりや直行率を下げる要因は現場によって様々です。自動化を検討する際は、自社の課題となっている工程の知見や実績を持つシステムインテグレーター(SIer)を選ぶことが、失敗しないための近道となります。
工場ラインの自動化では、工程ごとに「属人化」「スペース制約」「精度の安定」など異なる悩みがあります。設計・提案だけでなく、現場ヒアリングから設置・保全・アップデートまで一貫対応する企業こそ、課題を根本から解決できます。
ここでは、そうした対応力を備えた東海エリアの3社を工程別にピックアップしています。
不良品の検出には、工程ごとの流し方・止め方・向きといった動きの把握が不可欠。サカエは、検査を含む多様な工程で150社・1500台超※の自動化設備導入を支援してきた知見から、成立条件を踏まえた提案が可能です。
特定メーカーに縛られない提案型商社として、機器やソフトを柔軟に組み合わせ、属人化しがちな検査工程も、再現性ある仕組みとして構想・テスト・設置まで一貫対応します。
スペース制約が課題となる搬送工程では、装置の動きを踏まえたレイアウト構想力が求められます。TO WARDS-FUTUREは、専用コンベアからAGV/AMR/AGF、多軸ローダまで柔軟に選定し、搬送ルートや配置をゼロから設計します。
レイアウト条件に応じて、搬送手段そのものを柔軟に設計できるため、現場に適したライン構成を、既製品にとらわれずに実現します。
段替えや品種切替が前提の組立工程では、装置の柔軟性は必須。名古屋精工は、ロボットハンドを含むフルオーダー設計により、多品種・小ロットに対応した段替えレスのシステムの製造実績が豊富。
製品変更や他社機の改造にも柔軟に対応できる体制で、変化が前提の現場でも、将来を見据えた組立自動化を構築します。