製造現場において、多品種少量生産の需要が高まる中、生産効率を大きく左右するのが「段取り替え」の作業時間です。本記事では、段取り替えの基本となる「内段取り」と「外段取り」の違いや、段取り時間を短縮する「シングル段取り」の考え方について解説します。また、具体的な改善ステップや、ロボットを活用した自動化の成功事例も紹介しますので、現場の生産性向上にお役立てください。
段取り替えとは、製造ラインにおいて、生産する製品の品目を切り替える際に行われる一連の準備作業のことです。具体的には、金型や治具の交換、刃具のセッティング、材料の入れ替え、装置のパラメータ変更、そして切り替え後のテスト加工や調整などが含まれます。前の製品の生産が終了してから、次の製品の良品が安定して生産できるようになるまでの時間が「段取り時間」として計測されます。
段取り替えを行っている間、機械や設備は生産を行っていない状態(非稼働状態)となります。そのため、段取り時間が長引くほど稼働率が低下し、生産リードタイムの延長やコストの増加につながります。顧客のニーズが多様化し、小ロットでの生産が求められる現代の製造業において、段取り替えの時間をいかに短縮し、設備の稼働時間を最大化するかが競争力維持のための重要な課題となっています。
段取り替えの時間を短縮するためには、作業を「内段取り」と「外段取り」の2種類に明確に分けて考えることが基本となります。
内段取りとは、機械やラインの稼働を完全に停止しなければ行うことのできない段取り作業を指します。代表的な例として、プレス機への金型の脱着や、装置内部の部品交換などが挙げられます。この内段取りの時間が、設備の停止時間に直結するため、改善において最もメスを入れるべきポイントとなります。
外段取りとは、機械やラインが稼働して製品を生産している最中であっても、並行して行うことのできる準備作業のことです。例えば、次に使用する金型や材料を機械のすぐそばまで運搬しておくことや、使用し終わった治具の片付けなどが該当します。外段取りは設備の停止時間に直接的な影響を与えないため、これを効率よくこなす仕組み作りが求められます。
内段取りと外段取りのほかに、本来不要である「ムダな作業」も存在します。工具や部品を探し回る時間、作業員が迷う時間、基準が曖昧なことによる過度な微調整の時間などです。これらは付加価値を生まない作業であり、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底などによって排除していく必要があります。
段取り替え改善の目標としてよく用いられる言葉に「シングル段取り(SMED:Single Minute Exchange of Die)」があります。これはトヨタ生産方式から生まれた概念で、段取り替えにかかる時間を10分未満(分数が1桁=シングル)に短縮しようとする取り組みです。
金型交換に何時間もかかっていた時代から、工夫と改善を重ねて数分台での切り替えを実現したこの手法は、現在ではプレス加工に限らず、組立工程や食品製造など幅広い分野で応用されています。
まずは、現在の段取り替え作業をビデオ撮影などで記録し、どの作業にどれだけの時間がかかっているかを詳細に分析します。その上で、すべての作業を「内段取り」「外段取り」「ムダな作業」の3つに分類します。現状を正確に「見える化」することが改善の第一歩です。
次に、現在設備を止めて行っている「内段取り」の中に、設備を動かしながらできる作業(事前の準備など)が含まれていないかを検討します。例えば、金型をあらかじめ予熱しておくなど、工夫次第で外段取りに移行できる作業を見つけ出し、設備の停止時間を削り取ります。
外段取り化できない純粋な「内段取り」については、作業そのもののスピードアップを図ります。ボルトやネジによる固定作業を、ワンタッチのクランプ式やカセット方式に変更することで、工具を使わずに瞬時に交換ができるよう設備を改造するなどの対策が有効です。
外段取りの作業効率も高めます。部品や工具の配置を標準化し、探すムダをなくします。また、段取り後の「調整作業」は属人的になりやすく時間を浪費しがちです。ストッパーや位置決めピンを活用して「誰がやっても同じ位置に一発で決まる(調整レス)」仕組みを構築したり、ロボットなどの自動化設備を導入して複雑な切り替え作業をシステム化することも視野に入れます。
ある食品工場では、ケーキの焼き型の側面に敷き詰めるためのシートをセットする作業に多くの人手を割いていました。この準備作業は「シートを手に取り、丸めて、型に挿入する」という人の手ならではの複雑な動作が必要であり、長らく自動化が困難とされていました。
しかし、自由度の高い垂直多関節ロボットと、独自のシート巻きつけ用ハンドを組み合わせることで、人の複雑な動きの再現に成功。1時間で600個の焼き型へシートを挿入することが可能になりました。
この導入により、従来3人がかりで行っていた準備(段取り)作業の大幅な省力化と、生産効率の向上を実現しています。
参照元:オムロン株式会社(https://www.fa.omron.co.jp/solution/case/col_012/)
段取り替えの改善は、現場の作業員だけでなく、設計や生産技術などの部門が一体となって取り組むことが重要です。また、シングル段取りのような高い目標を達成するためには、治具の改善や設備の改造、さらにはロボット導入といった投資が必要になるケースも多々あります。
自社のノウハウだけでは改善が頭打ちになっている場合や、どこから自動化に手を付ければよいか迷う場合は、FA(ファクトリーオートメーション)の専門知識を持つシステムインテグレーター(SIer)や専門商社に相談することで、最新の技術を駆使した最適な解決策が見つかる可能性が高まります。
段取り替えを効率化し、多品種少量生産に対応するためには、その工程ならではの課題に合わせた対策や設備の選定が必要です。各工程の悩みに応じた実績やノウハウを持つ企業に相談することが、効率的で安定した稼働への第一歩になります。
当サイトでは、構想段階で不安の多い工程でも、自社の状況に置き換えやすい事例を提示できる、工程ごとの強みと対応力を持つ3社をピックアップしています。ぜひ参考にしてみてください。
段取り替えは、製造業における生産効率を決定づける重要な要素です。「内段取り」と「外段取り」を明確に区別し、内段取りの外段取り化や、治具のワンタッチ化、調整レス化を進めることで、設備の停止時間は大きく短縮できます。段取りのムダを排除し、シングル段取りを目指す姿勢が、柔軟で競争力のある生産体制の構築に繋がります。
人の手による段取り作業や微調整に限界を感じている場合は、ロボットなどの自動化機器の導入も有効な手段です。自社の生産体制に合った段取り改善や自動化の相談先をお探しの方は、以下のリンク先からおすすめのパートナー企業をご確認ください。
工場ラインの自動化では、工程ごとに「属人化」「スペース制約」「精度の安定」など異なる悩みがあります。設計・提案だけでなく、現場ヒアリングから設置・保全・アップデートまで一貫対応する企業こそ、課題を根本から解決できます。
ここでは、そうした対応力を備えた東海エリアの3社を工程別にピックアップしています。
不良品の検出には、工程ごとの流し方・止め方・向きといった動きの把握が不可欠。サカエは、検査を含む多様な工程で150社・1500台超※の自動化設備導入を支援してきた知見から、成立条件を踏まえた提案が可能です。
特定メーカーに縛られない提案型商社として、機器やソフトを柔軟に組み合わせ、属人化しがちな検査工程も、再現性ある仕組みとして構想・テスト・設置まで一貫対応します。
スペース制約が課題となる搬送工程では、装置の動きを踏まえたレイアウト構想力が求められます。TO WARDS-FUTUREは、専用コンベアからAGV/AMR/AGF、多軸ローダまで柔軟に選定し、搬送ルートや配置をゼロから設計します。
レイアウト条件に応じて、搬送手段そのものを柔軟に設計できるため、現場に適したライン構成を、既製品にとらわれずに実現します。
段替えや品種切替が前提の組立工程では、装置の柔軟性は必須。名古屋精工は、ロボットハンドを含むフルオーダー設計により、多品種・小ロットに対応した段替えレスのシステムの製造実績が豊富。
製品変更や他社機の改造にも柔軟に対応できる体制で、変化が前提の現場でも、将来を見据えた組立自動化を構築します。